top of page

ー活動報告ー 復興支援 神戸から真備へ_vol.21



尾山 郁人

学生メンバーの尾山 郁人です。


平成30年の西日本豪雨で被害を受けた倉敷市真備町で行った、21回目の慰問ボランティアのご報告をさせていただきます。


 (土手からの倉敷市真備町の景色)


「私の家ね、3階があるの!」家にお邪魔してすぐに、子ども達が教えてくれた。その意味を理解できたのは、少し離れた場所から家を眺めたときだった。屋根の中央部にぽっかり穴が、そこから見えた3階は、2年前と同様の豪雨被害が発生しても家族全員が安全に避難できる場所だったのだ。この高さじゃないと命を守れないのかと、浸水深などメディアの報道で目にするような数字の情報だけ見ても容易に想像できない現実を身近に感じた一瞬だった。


(被災者同士で行った写真展の資料)


さらに、万が一救助ボートで避難する状況を想定し、屋根の勾配をつたって楽に乗り込めるよう計算された設計になっていた。思い出したくない記憶であるはずの災害に真摯に向き合い、その教訓が確かに形となって表れていた。二度と経験したくないと願いながらも、次にいつ起こるかもしれない災害を想定し最善の対策を取る。一見、矛盾しているように見えるが、実際に実践に移すことができる意志の強さに感銘を受けた。

(氾濫があった高梁川(たかはしがわ)にて当時の話を伺う)


今年度に入って、真備町地区には既に2回避難指示が発令されている。自然との共存の過程の中で、避けることのできない不都合な出来事が起きてしまうことも事実だ。しかし、避難指示が出る度に、張り詰めた緊張感の中で命を守る避難の行動をとり、2年前の記憶が甦って心が揺さぶられる。

だからこそ、大事なもの全てを失ってしまった場所に住み戻る覚悟は相当なものだと感じた。家族構成、被害の程度、居住年数など様々な要素が複雑に絡み合う中で、判断を下すのは容易ではない。誰一人として同じ条件下に置かれている人はいないことを理解しながらも、自分なら決断ができるだろうかと、問いかけずにはいられなかった。



黄金色に色づき出した田んぼを横目に、現在、真備では来年4月の入居開始に向けた災害公営住宅の建設が急ピッチで進められている。変わることのない日常が戻りつつも、復興に向けた取り組みも新たな段階に入りつつあることを感じさせられた。



建物の再建が進み、町が少しずつ元の姿を取り戻すこと、そんな目に見える表面的な変化にのみ反応するのではなく、その背後にある様々な想いや葛藤、決断に向き合うことが、これ以降の支援活動を行う上でも欠かせないと感じた。そこには、何一つ切り取っては繋がらないストーリーがある。思いの詰まった言葉の力に圧倒されながらもその声に耳を傾ける続けること、それは団体としても個人としてもかけがえない財産に違いないと感じた。


学生メンバー 尾山 郁人


bottom of page